午前10時。小さなお堂には、8人ほどの近所の主婦の皆さんが集まり、賑やかなお喋りが始まっていました。
お堂の奥には不思議な石像が並んでいます。左右に赤い太陽と青い月を掲げ、胸元で印を結んでこちらを睨みすえています。皆さんに訊いてみました。
- ▼庚申様って、どんな神様なんですか?
- 「庚申様の本当の名前は猿田彦っていうんだって。庚申様には手が八つもあるので、何でもいろんな願いをかなえてくれる。昔の子供は色々用事を言いつけられると『庚申様じゃあるまいし、そんなにいっぺんにできんわ!』なんて言ったなあ」
- ▼どんなご利益があるんですか?
- 「何でもかなえてくれるけど、何か失くした時に庚申様にお願いすると、きっと見つかるんな。私も失くしものをした時にお参りしたら、ちゃんと出てきたに。でも普段からちゃんとお参りしてないと、神様も願いを聞いてくれんの」
- ▼庚申様のお祭りはいつからやってるんですか?
- 「そういうことは分からんなあ。昔は庚申様の掛け軸ってのがあって、それをかけてお祭りしたの。当番の家がみんなからお米を集めてな、昼は大人たちが集まって飲み食いして、夜は子供たちが集まって、跳んだ行っちゃ遊んだもんな」
- ▼このお団子、おいしいですね?
- 「これは庚申団子って言って、お庚申様のお祭りに必ず作るんだに。庚申様にお供えするのは丸いものがいいって昔から言うんな。昔ながらの庚申団子は白いんだけど、今日はちょっと工夫してゴマ黄な粉を混ぜてみたの。口に合うかなあ」
「今じゃ近所でも顔をあわせることが少ないけど、こういう機会があるとお互いのコミュニケーションになって楽しみ。これが毎日となると当番が大変だけど、庚申様の日はふた月にいっぺんだから、ちょうどいいんな」
普段は一時間ほどで終わる祭りですが、今日は余所者がお邪魔したせいでお開きになったのはお昼近くでした。
