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二度芋

畑と囲炉裏が守り育んだ里山文化

長野県選択無形民俗文化財「遠山郷の二度芋の味噌田楽」
馬鈴薯を煮て、竹串に刺し、えごま味噌、山椒味噌、ねぎ味噌などをぬって、炭火であぶった郷土食です。

遠山郷 囲炉裏で炙る芋田楽の写真囲炉裏で炙る芋田楽
(撮影:大井美知男氏)

遠山郷の二度芋

 遠山地方ではジャガイモのことを二度芋と呼び、古くから急傾斜の畑で栽培をしてきました。
 遠山の二度芋はふつうのジャガイモより小粒で貯蔵性がよく、身が締まっているのが特徴です。また、連作障害がなく、毎年同じ畑で作ることができます。
 蕎麦とジャガイモは世界でももっとも冷涼な土地に適した作物であるといわれていますが、遠山の二度芋はほかの土地に持っていっても葉が茂るばかりで芋が大きくならないとされています。
 厳しい南アルプスに生きる人々にとって、二度芋はなくてはならない遠山独特の作物なのです。

遠山郷 上村下栗の写真二度芋の産地、上村下栗
遠山郷 下栗の二度芋畑 の写真下栗の二度芋畑 (撮影:大井美知男氏)

二度芋の歴史

 ジャガイモはペルー・アンデス高地付近が原産とされ、ヨーロッパを経由して16世紀末頃の長崎にもたらされたのが日本のジャガイモ史の始まりです。
 ジャガイモという名はジャガタラ(ジャカルタ)に由来し、関東から中部地方にかけて分布していた名称ですが、現在では「馬鈴薯」と並ぶ一般名称となっています。

 現在の飯田下伊那地方では、二度芋といえば特に遠山産のものを指すようですが、東北や近畿地方などでは一般にジャガイモのことを「二度芋」と呼んでいます。
  その名の由来は、夏と秋の二度収穫できることから来ており、長崎などには「三度芋」の名もあるようです。けれど現在の遠山地方では春作のみで、後作にはソバを植える農家がほとんどです。
  よって、村内の料理店や民宿などでは八月以降に二度芋を味わうことができます。

 遠山の二度芋と一口に言っても、じつはいくつかの種類があります。
  二度芋の主要な産地は上村の下栗ですが、この二度芋は山梨県の流れを汲むとのことから別名「甲斐芋」と呼ばれています。
 高野長英の著作などによれば、ジャガイモ栽培は明和年間に甲斐国で広まり、その後信濃、飛騨、上野、武蔵などへ伝わったとされています。
 下栗に伝わる「甲斐芋」は、日本にジャガイモが広まっていった時代の名残の品種なのかもしれません。

 一方、南信濃村の八重河内などで作られている二度芋は「下り芋」と呼ばれ、遠州からヒョウ越峠を越えてやってきたといわれています。
 八重河内の民宿このたでは、下り芋の料理が味わえます。
 さらに、現在では白イモと赤イモの二系統が作られています。
 甲斐芋と下り芋、白イモと赤イモ。それぞれの味の違いが分かれば、あなたはかなりの“トオヤマニア”です。

遠山郷 赤イモと白イモの写真赤イモと白イモ (撮影:大井美知男氏)

芋田楽という名の文化財

 平成一四年三月十四日、「遠山の二度芋の味噌田楽」が長野県の選択無形民俗文化財に指定されました。標高の高い急斜地で作られる二度芋が、山間部の畑作文化を現在に伝える貴重な財産であると認められたのです。 (※注1)

 二度芋田楽は素朴な郷土料理です。皮をむかずに茹でた二度芋を竹串に三〜四個刺して、味噌タレをつけて囲炉裏の炭火で炙ります。タレはくるみ味噌やねぎ味噌も美味しいですが、なんといってもエゴマ味噌が遠山の味でしょう。
 炭火で炙られたみその香ばしさに誘われてかぶりつくと、ずっしりとしたその歯ごたえがジャガイモの原点を彷彿とさせてくれます。
 料理法は単純ですが、今では遠山にさえ、囲炉裏を持つ家はなかなかありません。そういう意味では、昔ながらの芋田楽を味わうことも難しくなっていると言えるでしょう。
 二度芋田楽は畑作文化、そして囲炉裏文化の結晶なのです。

遠山郷 芋田楽の写真祭りの屋台の芋田楽
●参考サイト
平成13年度第2回長野県文化財保護審議会議事録
遠山の二度芋が県の文化財に推薦されたときの議事録。
●参考文献
『からい大根とあまい蕪のものがたり』 2002 大井美知男・神野幸洋編著  長野日報社出版局