南和田大町の鎌倉詔さんが、父親とともにアマゴの養殖を始めたのは昭和三十七年。アマゴを村の特産品にしたいという思いからでした。現在では後を継いだ息子さんとともに、南信濃のアマゴ養殖を一手に引き受けています。
鎌倉さんの養魚場では、現在円形水槽を導入しています。つねに水流が保てるので水の淀みがなく、病気が出にくい上に魚の運動量が増えて身のしまったアマゴになるのです。水槽にはシートを貼り、魚に傷がつかないように配慮しています。
普通のアマゴは孵化後十〜十四ヶ月で出荷できるようになりますが、燻製にするような尺アマゴは、二年かけて育てます。

水槽を元気に泳ぐアマゴ

仕分け作業をする鎌倉さん
養殖といっても、アマゴの飼育には自然環境が大きくものを言います。とくに、一年中安定した水温と湧水量をもつ水の確保が第一条件。冬場は10℃以上、夏場は17℃以下の水温が理想です。特に夏場は、水温が20℃を越えるとたちまち病気が広がってしまいます。
「相手は水の中の生き物ですから気を使いますね。病気が広まりやすいし、一時間でも水が止まると酸欠になって全滅しかねません。台風が近づいてき
た時なんかは、もう寝ずの番ですよ。三年前の夏、谷川から水槽へ水を引くパイプが落石で破損したことがあります。運悪く私が外出していて、近所の
人から知らせを受けて駆けつけたときにはもう手遅れでした。出荷直前のアマゴが全滅して、二百万円の損害を出しました」
天然も養殖も、遠山谷のアマゴは自然が育んだ繊細な芸術品なのです。

朱赤斑も鮮やか